読書感想:問い続ける力(石川善樹)
キャラも顔も似ている(と勝手に思っている)石川善樹さんの新著。
Yahoo安宅さんがtweetでオススメされていたので衝動買い。
従って購入の利用は「衝動」以上のものではないけど、「問う」という行為が日常的にできている人の話はやっぱり面白くて、自分もそういう人でありたいという気持ちがあった。
内容は石川さん独自の考察+「問い続ける」プロたちとの対談集。
体系化されているものではない。というか、「問う」という行為自体が「こうこうこういうプロセスに則ってやる」というものでもないんだろう。
本書の論は哲学的なところもあるので、プロセスを(一旦)決めてしまっても「本当にそれが問うという行為なのか?」という無限ループにハマってしまうんだろう。
というわけで、読後感としては体系を学べた、というよりタメになるTipsが得られた、という感覚。
五月雨にメモっておく。
「論文を読まないことです。下手に読んでしまうとアレもコレもやられていると、暗澹たる気持ちになります。そうではなく、まずは自分の中で問いを膨らませます。そして解きたくて辛抱たまらんという状態になったら、そこで初めて論文を見るんです。」
一学生として論文になるようなテーマ探しに苦慮している身としては、とても身に沁みるお言葉。内発的な問いがないと、良い研究にならないんだよな。
元々の性分もそうだし、社会人初のキャリアが経営コンサルで、課題を与えられてから動くのが常態化していた自分にとってはなかなかハードルが高い。
「物事の本質を捉えるためには、単純で極端なケースを考えるとよい」 たとえば、血液型と性格の関係について何か本質的なパターンを導こうと思ったら、「大ざっぱなO型」という誰もが想定しそうな事例に注目するよりも、たとえば「神経質なO型」という外れ値に思える事例に着目した方が、本質に迫る可能性がある。
この考え方は相当普遍的に通用すると思う。困った時はこの考え方、という使い方ができそう。
思考が進まない原因は大きく二つある。一つは問いが難しすぎる場合。もう一つは知識があまりに足りなすぎる場合。
「あー思考が進まない!」となったときは、まずどちらのケースに当てはまるのか判断すべきですね。
明治・大正の頃の日本人って、平均して三つ、四つぐらい仕事を持ってたみたいですね。そもそもその頃は九〇パーセント近い人が個人事業主だったので、一年の中で三つ、四つの仕事を回しながら生きていた。
ほぼほぼ平成しか知らない自分にとっては想像もつきませんが、しかし事実は事実なので多職(という言葉はないみたいだけど、数十年後には広辞苑に載るはず!)は現実的ということですね。今風に言えばレジリエンスの高い人材に復古していくのかな。
これを聞いた時、好き嫌いを言うこともトレーニングだなと思ったんです。良し悪しというのは理屈なんですよね。「この本は、よかった」「この本は、いまいちだった」と言う人はけっこう多いんですけど、そこで好き嫌いについて言える人はあまりいない。 岩佐 それは至言ですね。好き・嫌いは、自分の知識ではなく、価値観を さらけ出すわけですからね。さらに加えるならば、好きと嫌いでは、嫌いのほうが言いやすくて、好きのほうが言いにくい。世の中、否定のほうがしやすいんですよ。
ポジションをとることが自分を鍛えますが、その効果は「嫌い」<「好き」ということですね。
たとえば、アップルは"Think different"というスローガンを掲げていますよね。この言葉を見ると、"Think different"していない人たちがたくさん思い浮かぶじゃないですか。それに対して、「社会をよくします」というようなありきたりのビジョンだと敵がよくわからないから、単なるポエムになってしまう。だから、ビジョンをつくるのがうまい人は、敵をつくるのがすごくうまいのではないかという仮説を立てているんですが。
ここは全面的には同意できなくて、敵を作るのがうまいんじゃなくて単に具体的・エッジが効いてる(他にない)ビジョンを立てているというだけの話に見える。
いずれにせよ課題が生々しく目に見えるくらいのビジョンが良いビジョンなんだろうとは思う。
自分としては研究や起業で生の課題にぶちあたっていたところだったので、指針になる考え方をもらえて良かった。
やっぱり本を読める時間があるって素敵。